VR/ARアート、体験前にチェック! 期待できること、知っておくべきこと
VR/ARアートという言葉を耳にして、「どんなものだろう?」「面白そうだけど、難しそう…」と感じている方は多いのではないでしょうか。特に、これまでVRゴーグル(ヘッドマウントディスプレイ、略してHMDと呼ばれることもあります)やARアプリを使ったことがない方にとっては、未知の世界への一歩を踏み出すのは少し勇気がいるかもしれません。
このサイト「拡張現実美術館」は、そんなVR/ARアート初心者の方々が、安心して新しいアート体験を楽しめるよう、情報を提供することを目指しています。今回は、実際にVR/ARアートを体験する前に「どんなことが期待できるのか」「どんなことを知っておくとより安心できるのか」について、初心者の方に向けて分かりやすく解説します。
VR/ARアート体験で「期待できること」
まず、VR/ARアート体験でどのような新しい驚きや感動に出会える可能性があるのかをご紹介します。
1. 作品の中へ「入り込む」没入感
従来の絵画や彫刻は、作品の「外」から鑑賞するものでした。映像作品も、画面という枠を通して見るものです。しかし、VRアートではHMDを装着することで、まるで作品が展開する空間そのものに入り込んだかのような感覚を味わえます。360度見回せる空間に、光や音、そしてアーティストが創造した形や色が広がります。
ARアートの場合は、スマートフォンなどを通して見ると、目の前の現実空間にデジタルアートが現れます。これも、現実世界とアートが融合する新しい体験であり、日常が非日常へと変わる驚きがあります。
この「没入感」や「現実との融合」こそが、VR/ARアートの最大の魅力の一つと言えるでしょう。
2. 作品に「触れる」「動かす」インタラクション
VR/ARアート作品の中には、ただ見るだけでなく、鑑賞者が作品に働きかけ、変化を生み出すことができるものがあります。例えば、コントローラーを使って作品の一部を動かしたり、掴んだり、音を奏でたり。ARアートでは、作品の周りを歩き回ることで見え方が変わったり、画面タップで変化が起きたりします。
このように、鑑賞者自身の行動がアート体験の一部となることを「インタラクション」と呼びます。インタラクションのある作品では、あなたは単なる傍観者ではなく、作品世界に積極的に関わる「参加者」となるのです。
3. 空間全体と五感でアートを体験する
VR/ARアートは、視覚だけでなく、聴覚や、時には操作を通した触覚的な感覚にも働きかけます。空間全体に広がる音響や音楽が、視覚的な体験をより深いものにします。作品の中を歩き回ったり、手を伸ばしたりする身体的な動きも、アート体験の一部となります。
このように、従来の五感の一部に強く働きかけるアートとは異なり、空間全体を使い、複数の感覚に同時にアプローチすることで、より豊かで心に響く体験が期待できます。
VR/ARアート体験で「知っておくべきこと」
新しい体験には、少しの準備や知識があると、よりスムーズに楽しむことができます。ここでは、体験前に知っておくと安心できることをご紹介します。
1. デバイスの準備と基本的な操作
VR/ARアートを体験するためには、多くの場合、専用のデバイスが必要です。
- VRアート: 主にHMD(VRゴーグル)が必要です。自宅で体験する場合は、購入したHMDの初期設定や、アート作品をダウンロード・起動するための準備が必要になります。展示施設などで体験する場合は、スタッフの方が準備してくれます。操作は、手に持つコントローラーや、ジェスチャー(手の動き)で行うことが一般的です。最初は少し戸惑うかもしれませんが、基本的な操作(移動、視点変更、決定など)を覚えれば、すぐに慣れることができます。
- ARアート: スマートフォンやタブレットで体験できるものが多く、比較的気軽に始められます。特定のアプリをダウンロードしたり、ウェブブラウザからアクセスしたりする方法があります。操作はスマートフォンの画面上でのタップやスワイプ、端末自体を動かすことなどです。
デバイスの種類や準備については、別の記事でも詳しくご紹介していますので、そちらも参考にしてみてください。
2. 「酔い」の可能性と対策
VR体験で乗り物酔いのような症状(VR酔い)が出ることがあります。これは、視覚情報と体の揺れなどの感覚情報にずれが生じることなどが原因と言われています。全ての人が酔うわけではありませんし、作品の内容や個人の体調によっても異なります。
もし酔いが心配な場合は、以下の対策を試してみてください。
- 短時間から体験を始める: 最初は10分~15分程度の短い時間で切り上げ、徐々に慣らしていくのがおすすめです。
- 体調が良いときに体験する: 寝不足や空腹時、疲れているときは酔いやすい場合があります。
- 休憩をこまめにとる: 少しでも気分が悪くなったら、すぐにデバイスを外して休憩しましょう。
- 換気の良い場所で体験する: 閉鎖的な空間より、新鮮な空気がある方が良い場合も。
- 酔い止め薬の服用: 心配な方は、市販の乗り物酔い止め薬が効果的な場合もあります(必ず医師や薬剤師に相談してください)。
最近のデバイスや作品は、酔いを軽減するための技術が進んでいますが、可能性として知っておき、無理なく楽しむことが大切です。
3. 安全確保のための注意
VR体験中は視界が完全に覆われるため、現実世界が見えなくなります。そのため、周囲の安全を確保することが非常に重要です。
- 広い安全な場所を確保する: 体験中に腕を振ったり、少し移動したりすることがあるため、周囲に物がない、人やペットがいない十分なスペース(最低でも1.5m四方程度)を確保してください。
- 危険なものを片付ける: ぶつかると怪我をする可能性のある家具の角や、割れやすいものなどは近くに置かないようにしましょう。
- 座って体験する選択肢を知る: 多くのVR作品は立ったままでも座ったままでも体験可能です。立ったままの方が没入感が高い場合もありますが、転倒などが不安な場合は、まず座って体験してみるのも良い方法です。
AR体験の場合は、スマートフォンを見ながら歩き回ると周囲が見えにくくなります。移動する際は必ず立ち止まり、周囲の安全を確認するようにしましょう。
4. 「アート」としての作品選び
VR/ARコンテンツには、ゲーム、映像、コミュニケーションツールなど様々なものがあります。その中で「アート」として体験する場合は、単に操作が面白い、映像がきれい、といった点だけでなく、「この作品を通してアーティストは何を表現したいのだろう?」という視点を持つことで、より深く鑑賞できます。
初めての体験では、操作がシンプルで、美しい景観や音響を楽しめる作品や、物語性を感じさせる作品から入ってみるのも良いでしょう。このサイトでも様々な作品のレビューや情報を発信していますので、ぜひ参考にしてみてください。
体験への最初の一歩を踏み出しましょう
VR/ARアート体験は、少しの予備知識と準備があれば、誰でもその扉を開くことができます。「難しそう」「酔うのが怖い」といった漠然とした不安も、具体的な情報を得ることで軽減されるはずです。
まずは、この記事でご紹介した「期待できること」「知っておくべきこと」を頭の片隅に置きながら、興味のある作品や体験できる場所を探してみてください。スマートフォンで手軽に体験できるARアートから始めてみるのも良いですし、VR体験施設などでスタッフの方にサポートしてもらいながら初めてのVRアートに触れてみるのもおすすめです。
この新しいアート形式が、あなたの日常に新鮮な驚きと感動をもたらすことを願っています。